中学3年間の総合的な学習の集大成となる卒業発表

日本大学豊山女子中学校・高等学校
日本大学豊山女子中学校・高等学校(以下、豊山女子)では、教科書の内容を掘り下げて物事の本質を理解する「数学探究」「理科探究」と、テーマ選定から探究・発表までを1年間かけて取り組む「卒業発表」を行っています。同校独自の「探究学習」に関して、卒業発表会で高い成果を挙げた高校1年生の二人と、中学3年学年主任の谷英毅先生にお話をうかがいました。

入学初年度から取り組む理数探究から得られた学び

中学1年生は数学探究、2年生は理科探究に取り組みます。

スーツ姿の男性
谷先生
女子生徒
S.K.さん
女子生徒
E.R.さん

「数学探究」「理科探究」の内容と、そこから得られた学びに関して教えてください。

S.K.さん 中学1年生の数学探究では、教科書外の内容を掘り下げて学習し、試行錯誤しながら楽しく数学を学ぶことができました。中学2年生の理科探究では、数多くの実験や観察の授業を通して自然現象への理解を深め、考察力や表現力を高めることができました。

谷先生 数学探究では「数学の泉」という資料集を用いて、教科書の理解をより深めるための考察を行っています。また、正負の数の導入では「トランプゲーム」の実施、空間図形の授業では11種類の形を組み合わせて平面模様や立体模様を作ることのできる教具「ポリドロン」の活用、確率の授業では実際にサイコロを使うなど、実際に体験して学ぶことができる授業を行っています。
理科探究では、実験用具が整っている強みも活かして年間約20回の実験を行っています。実験後はタブレット(ICT機器)を活用して考察を行い、グループ内でお互いの考えを共有することで、論理的に考える力を育成しています。
特に最近は積極的にチャレンジする生徒が増えたように感じています。理数系は「なぜだろう」「こうではないか」といった疑問から仮説を立てて検証していくプロセスが重要ですが、探究学習を通してそのプロセスを自然と身につけることができます。

卒業発表までに悩み抜いて選んだ研究テーマ

中学3年生では、数学探究・理科探究の集大成となる卒業発表があります。

卒業発表に向けたサポート内容を教えてください。

谷先生 まずは中学3年生の4月に、外部の講師の方をお招きした文書表現講演会を開催し、探究学習の方法、文書表現の基礎、スライドの作り方について学びます。その後、夏休み課題として2つのテーマを考え、9月にかけて担任の先生と相談してテーマを1つに絞ります。引き続き担任の先生と相談しながら、選んだテーマに関しての1600字程度の原稿を作成し、10月には発表用のスライド資料も作成します。作成した原稿や資料は、講演会の講師の先生にも添削していただき、2月下旬の発表に向けて最終校正を行っていきます。

卒業発表で高い成果を残した生徒の研究の進め方や、生徒が選ぶテーマの傾向を教えてください。

谷先生 昨年度は「先生の笑い方のクセ」「人類光合成計画」といったユニークなテーマがありました。発表に向けては、自分なりの仮説を立てて、アンケートや自分で調べた学説を参考にしながら、しっかりと自分の主張を発表してくれました。
テーマは理数系に偏ることなく、「故事成語の由来」「歴史のミステリー」「ヘルスケア」など、生徒それぞれが幅広い分野に関心を持って探究を進めています。

発表の様子
それぞれのテーマについて集大成の発表を行います

卒業発表に選んだテーマや、どのように論文作成を進めたのか教えてください。

S.K.さん テーマは「童話と教訓」で、童話にはさまざまな教訓があり、今の私たちの生活にもその教訓を活かすことができるということをまとめました。まずは大まかな構成を決めて、その中で具体的に何を話したいのかをあらかじめ考えた上で資料集めを始めました。
文章表現講演会では、イラストや図をメインで使うことで視覚的に内容が理解できるようになること、聞き手が飽きないように適宜問いかけを作るなどの工夫が必要だと学びました。卒業発表会本番では、童話のあらすじの説明を文字で行うのではなく、登場人物の絵を動かしてアニメーション風にして説明しました。

E.R.さん 私のテーマは「日本の学校と世界の学校」です。それぞれの学校を比較して、海外の学校の楽しさや面白さを伝えようと思いました。論文を進める上では、自分の経験に加えて、インターナショナルスクールで働いている母に話を聞いたり、調べながら進めました。
文書表現講演会では、内容をコンパクトにまとめること、フォントは遠くからでも見やすい色・柄を選ぶこと、スライドで1番伝えたい内容が何かを考えて作ることを学びました。実際の資料では、文字が多くなって見えにくくならないように、キーワードや重要な部分だけをスライドに記載し、それ以外は口頭で説明するようにしました。

自分事として関わってきた探究学習の成果

中学3年間をかけて取り組んで分かった、探究学習の「面白さ」を教えてください。

S.K.さん 普段受けている授業とは違い、自分自身で探究するテーマを決められること、先生や友達から意見をもらってさまざまな観点から探究テーマを深めていけることが、とても楽しい経験でした。

E.R.さん 探究を深めていくことで、知識が増え、視野を広げることできました。さらに、探究テーマを自分が本当に興味のあることに設定すると、知的好奇心がより高まり、探究活動がより面白くなると思います。

高校で取り組みたい探究内容があったら教えてください。

S.K.さん 高校では地理を学ぶゼミに入っているので、社会で起きている地理的な問題と、自分が興味のあることを結びつけながら、引き続き探究を続けていきたいと思っています。

E.R.さん 私はVRを扱うゼミに所属しています。VRを活用した医療や建築について探究しており、今の目標は学校の新校舎を3Dで作ることを目標としています。

紙に何かを書く様子
ゼミで専門的な内容を研究できます!

先生から見た探究学習の特色と「面白さ・魅力」を教えてください。

谷先生 探究学習は中学校の3年間だけでなく、N進学コースの生徒は「探究プラットフォーム」、理数Sコースの生徒は「理数探究」と、高校でもさらに深化していきます。生徒のテーマ設定・問題意識や関心・アプローチ方法は多種多様で、大人には考えられない視点が満載です。また探究活動による成果は、基礎学力の向上はもちろんのこと、総合型選抜の大学入試に貢献できると考えています。
小学生の頃は誰しもが、身の回りの現象に興味を持ち、保護者や先生に納得いくまで教えてもらって腑に落ちた経験があるかと思います。探究学習では一度初心に返って、自分が疑問に思っていることを探究したり、これまで研究していたことを更に深める研究ができます。また発表内容はもちろんのこと、生徒の動画編集技術やプレゼンテーション技術も格段に向上するので、私も毎年の発表会を楽しみにしています。十数年後に社会の中心となる中高生にゼロからイチを生み出す力を養って欲しいです。

編集後記

中学1年生から始まり、高校生まで続いていく豊山女子の探究学習は、自分で課題を見つけて仮説を立て、リサーチを重ねて仮説を検証し、分かったことを周囲に分かりやすく伝えていくという、これからの社会を変えていくための土台となる力が身につくと感じました。興味を持った方は、ぜひ一度学校説明会に参加してみてはいかがでしょうか。

イベント日程

イベント名 日時
土曜見学会(中学) 2025年1月18日(土) / 1月25日(土) / 2月22日(土)
入試報告会(中学) 2025年3月22日(土)